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なにもない手から生まれるもの |
今の所、機動警察パトレイバーがメイン 『好きこそ物の上手なれ』を目指して邁進中 |
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「げほげほげほ…ぶわぁくしょん!!!ずずっ!!」
その男は朝から不調だった。
「遊馬大丈夫なの?」
心配げに様子をうかがって来る野明。
「遊馬さん、お薬用意しましょうか?」
大きな見た目とは裏腹に、細かな気遣いを見せてくれるひろみ。
「風邪薬はノンカフェインの栄養ドリンク剤と一緒に飲むと効きますよ」
細身なクスリマスター進士はきらりとメガネを光らせる。
「そんなもん気合いで治せんでどうするぅ!
それよりもカゼをひく段階で自己管理がなっとらんのだ!!」
カゼとは一切縁の無い、むしろ菌すら逃げて行く太田。
「篠原君。カゼをひいている人がマスクをするのは最低限のエチケットよ」
厳しくも、遊馬の机の上にマスクを置く学級委員長の熊耳。
遊馬は、机の上に置かれたマスクをする。
確かに熊耳の言う通りだ。自分の咳やくしゃみで他の誰かにうつす事は十分にあるのだ。
周りの心配はありがたいが、自分の体だ自分が一番判っている。
『うるさいんだよ』
遊馬は書類のコピーをとるために、席を立ち上がる。
コピー機に少し寄りかかるようにしていると、体が楽だった。
『あ…。やべぇな。熱でてきたかも…』
そう思いながらも何とか午前中が終わって行った。
昼食時間になっても食欲が無かったが、なにも食べないのも体の為にはならないし、食べなければまた周りに余計な気を使わせてしまう。そしてそれは何よりも面倒だった。
遊馬の昼ご飯は上海亭のあんかけチャーハン。
レンゲを持ち上げようとするが、それを口に運ぶ気にはなれない。
しかし、周囲の目もある事を考えてしまうと食べざるおえない。
『明日の朝イチ病院に行こう』
そう判断して今日を何とかやり過ごそうと考えていた。
茶坊主の野明が少し遅れてお茶を持って来る。
既に食べ終わってしまっている太田には注意されていた。
「へへ…すっかり忘れてた」
ぺろりと舌を出しながら、遊馬へお茶を手渡した。
「苦手な書類仕事に集中するのは判るんだけどさぁ
ちゃんとしろよ〜」
渡されたお茶をずずっと啜ると、遊馬の額に冷たい手が添えられた。
咄嗟にその手を掴んで額から離す。
お茶を手渡した際にほんのりふれた指先の遊馬の手が
異常に熱かった事に気付いた野明の対応だった。
「遊馬!!!!熱あるじゃないか!!!」
野明の大きな声が食堂に響く。
遊馬はちっと舌打ちして嫌顔をした。そして平静を装って、あんかけチャーハンを頬張る。他の仲間達が遊馬へと視線が集中し、「今すぐ病院へ行け」「宿直室で休んだ方がいい」「薬用意します」と口々に騒ぎ出す。
遊馬は苦笑いしながら
「大丈夫だって、微熱だよ。微熱」
味のしないチャーハンをせっせと口に運んだ。
あやしげな視線を向けながらも、とりあえず食欲のある遊馬を見て一同は大人しくなったが、隣に腰を下ろした野明は不機嫌極まりなかった。
「微熱???微熱どころじゃないよ」
「お前ウルサいんだよ」
「ぶっ倒れても知らないからね!!」
「倒れねーし。ほっといてくれていい」
「なんだよそれ…。そんなんで出動があったりして対応できるわけ?」
二人の言い争いが段々と大声になってくる。
「対応出来るに……」
遊馬が怒りのあまり席を立ち上がった瞬間、2課棟内に出動サイレンが鳴り響いた。
遊馬が指揮者に乗り込もうとした時だった
「おーい篠原」
後藤が手招きして遊馬を呼んだ。
「何ですか?隊長」
後藤の元へ駆け寄ると後藤の手が遊馬の額へ当たる。
うんうんと一人頷いている後藤の姿。
「お前…とりあえず宿直室で休んでろ」
そう言うと後藤は遊馬に背を向け、さっさとミニパトへ向う。
「え…たいした事は…」
追いすがる遊馬へクルリと振り向き
「お前の仕事は休む事だ
一人の体調不良で万一の事がある職場なのよココは
責任感じるなら早く治せよ」
遊馬は後藤の言葉で足が止まる。自分の自己管理の甘さと、仕事への甘さを同時に指摘されているような気がした。レイバー隊は常に肉体的にも精神的にも平常・健康で居なければならない。少しの不調によって判断が出来なければ出動先の、その場に居る人命を失う事もある職場なのだ。
騒々しかったハンガーが一気に静かになる。
隊員室へ戻ると遊馬の机の上には、風邪薬と栄養ドリンク剤、そして水が置いてあった。
多分だが、ひろみが用意したものだろう。薬と栄養ドリンク剤は進士のオススメに違いない。置かれていた薬を全て飲み干すと、遊馬は宿直室に向うしか無かった。
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