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なにもない手から生まれるもの |
今の所、機動警察パトレイバーがメイン 『好きこそ物の上手なれ』を目指して邁進中 |
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「野明。久しぶりに映画でも行かないか?」
「うん。あたしも誘おうと思ってたんだ。今観たいのあってさ。」
それが、非番前日に交わされた会話だった。
久しぶりに待ち合わせをして、映画館へ向う。あの件以来、一緒に休みを行動する事がなかった。
お互いがお互いを意識しない振りをしてるが故に、二人の微妙な空気感は否めなかった。
映画も終わりいつもの様に居酒屋へ向う。
「はいお疲れさ〜ん」
「お疲れ〜。」
遊馬はビール、野明は日本酒。これもいつもと同じ。
杯を重ねるとすでにいつも通りの二人の出来上がりだった。
それが残念なようで、でもホッとした気持ちを双方持っていた。
『やっぱりこいつとはこの関係が一番か』
もちろんお互いが同じ気持ちであるなどとは思ってもいない。
すでに酔いが回って来ている野明が突然笑い出した。
「何思い出し笑いしてんだ。」
「ん〜。以前さぁ、ある人と飲んだんだけど」
「ああ?」
「あたしには不釣り合いの店でね〜。何だか飲んだ気しなかったなぁ」
「ふ〜ん」
「大人な女の扱いされたんだけど…やっぱりあたしはまだまだ子どもだわ」
満面の笑みで日本酒を飲み干し、「おじさんおかわりー」と立ち上がってとっくりを振る。
遊馬の中では野明を「大人な女」扱いする男が誰なのかも気になったが、それ以上にその関係が知りたくなった。
もしや付き合っているのか?そう思うと不安と苛立が遊馬の心の中に渦巻いていた。
「そのある人って男なのか?そいつと付き合ってるのか?」
「え〜 まさかぁ。」
一瞬目を見開いたが、すぐににへら〜と笑っている野明にも無性に腹が立ってくる。
その理由が自分でも判っているが、そんな事は遊馬の自分勝手な問題だ。
野明が悪い訳じゃない。遊馬は手元のビール瓶をそのまま口につけ一気に飲み干した。
「ちょっと…ちょっとお兄さん!!」
野明が慌てた様に声をかけてくる。
だん!!とビール瓶を机に叩き付ける。「おやじ〜。日本酒3本追加」
運ばれた日本酒を次々に空けてみせると、目の前の野明はあっけにとられていた。
さらに追加の2本が来たとき時、野明に止められた。
「一気に飲み過ぎだよ」
「そ〜か〜」
「どうしたんだよ。いきなり馬鹿飲みして」
「…俺の考えすぎる頭を…止めてやりたくてな」
野明は何の事なのか判らないと言う表情をしていた。
遊馬の手からとっくりを取り上げ、野明は自分のおちょこに注いで一口飲む。
「あたしはね。遊馬とこうやって、こういう所で飲んでられるのが好きだよ」
「ま…俺となら…うわばみのお前を…隠さなくていいからな…」
おちょこに注がれた酒を見詰める野明の目は限りなく大人の女の目で
そして少し寂しげな目である事に遊馬は気付いた。
そのまなざしを直ぐに消して、いつもの野明の笑顔が遊馬に向く。
「そ〜なんだよね〜 大人の女なんて演じられっかぁ〜!!
あたしはあたし!ガキで結構じゃないの!!」
酔っぱらいそのものの口調で、あっと間に遊馬の注文した日本酒を空けたのだった。